■決勝
◇7月19日 ◇スリーボンドスタジアム八王子
船橋フェニックス(世田谷)
21010=4
4213x=10
用賀ベアーズ(世田谷)
【船】小池、森下、大野─石黒
【用】佐藤、岡田─並里
本塁打/大野(船)、大和2(用)
二塁打/森下(船)岡田2、常永2(用)
【評】1回表、船橋フェニックスは先頭打者の森下貴斗の内野安打と二番・大野凌駕のバント安打で無死一、三塁とし、ボークで先制。さらに石黒信匡主将の適時打で2点目。しかし、なおも続く一死満塁のチャンスでバント本塁封殺を喫するなど、以降は追加点を奪えず。するとその裏、用賀ベアーズは四死球で無死一、二塁から、三番・岡田大和が右翼線に適時二塁打、四番・常永悠斗も右中間に2点適時二塁打を放って逆転。さらに並里煌の適時打で4点目を奪い、一気に主導権を奪った。船橋は2回に大野が中越えのソロ本塁打を放つも、その裏に用賀は大和結星主将が右中間を破る本塁打を放ち、その後も平尾大地、岡田の連打からさらに1点。3回にも大和主将が2打席連続となる本塁打を右翼線に放って1点を加えた。船橋も4回には髙橋冴優の安打と森下の適時打で1点を加えたが、反撃もそこまで。その裏、さらに3点を加えた用賀は、制限時間の90分を過ぎた5回表・船橋の攻撃もピンチを背負いながらゼロでしのぎ、優勝を決めた。

勝負を避けずに打って勝とう!
時間制限により最終回となった5回表、二死満塁。船橋フェニックスの強打者、森下貴斗の打球をさばいた用賀ベアーズのサード・大和結星主将が三塁キャンバスを踏み、ライバル対決に終止符を打った。
「何点リードしていても一気に追いつかれる、そんな爆発力があるのが船橋打線。最後のアウトをとるまで、まったく安心できませんでした」
用賀・村上太郎監督はようやく一息、といった様子で笑顔を浮かべた。
「直接対決でいうと、年明けのナガセケンコー杯で勝った後は、全日本学童とこの大会の予選になっている世田谷区春季大会、そして全日本東京都大会、ジャビットカップの区予選と、直近は3連敗していたんです。ここは勝ちたかった」
全日本学童予選では、船橋は用賀を下した勢いそのまま、都大会も勝ち抜いて優勝し、東京チャンピオンとして全国大会出場を決めていた。
最も身近で、最も手ごわいライバル。ただ、このまま“1強状態”を許すわけにはいかない──。
大きな、そして価値ある1勝だ。強力すぎる相手打線の誰とも勝負を避けることなく、真っ向からぶつかり、そして勝ち切ってみせた。
再び村上監督。
「相手打線は強力。とくに一番の森下君、二番の大野君は素晴らしい打者で、長打もあるし、足の速さも、とんでもない。2人で取られる点は仕方ないと、選手たちには話していたんです。ただ、勝負を避けるような戦い方をするつもりはありませんでした。取られたら取り返す。そして打ち勝とうと。もちろん、他のどのチームよりも船橋打線を知っている自負もあります。彼らだって、弱点がないわけじゃない」
計算なくぶつかっていたわけではない。プランを立て、その通りに戦い抜いたのだ。

一番打者の大和主将は初回の四球に続き2打席目㊤、3打席目㊦と2打数2本塁打。用賀打線に火をつける活躍でMVPに

「それにしても」
V監督は続けた。
「きょうはとにかく、みんながよく打ってくれました。2本塁打のキャプテン、一番・大和結星、そして3打数3安打の三番・岡田大和。2人のヤマトが打線を引っ張ってくれましたね」
本塁打連発の大和主将は「先制されたけど、初回、すぐに逆転できたのがよかったんだと思います」と試合を振り返る。「リードがあったから、その後も楽な気持ちで打つことができたし、守備のリズムもすごく良かった。2本のホームランもうれしかったけど、最後の守備でサードゴロを捕って、ベースを踏んだときが一番、うれしかったです」
岡田は「ボクは三番打者だから、初回に必ず打順が回ってくる。そこで絶対に打って、しっかりつないでリズムをつくろうと考えてたんです。タイムリーが打ててよかった」と初回の打席の結果を強調。「先頭で回ってきた(4回の)最後の打席もよかった。あのときは、絶対に塁に出るんだと思って打席に入ったんです」。初回に続く二塁打で締めくくった打撃内容にも胸を張った。

三番・岡田㊤は二塁打2本を含む3打数3安打と大暴れ。先発した佐藤㊦は3回1/3を力投、船橋の強力打線を3点に抑えた

船橋の強力打線を相手に、ひるむことなく腕を振り続けた先発投手・佐藤傳修も、打のヒーロー2人に負けない笑顔だ。「コントロールと緩急に気を付けて、テンポは速めにって意識しました。打たれたときに、割り切ってすぐに切り替えられたのがよかったです。初回は2点取られたけど、(なおも満塁のピンチだった)その後をしっかり抑えられたことでリズムに乗れました。2回以降はいいピッチングができたと思います!」
3人の殊勲選手はそう言い、テンション高く喜び合う、仲間たちの輪に戻っていった。








創立50周年を前に初の東京一
4年生時のマクドナルド・ジュニアトーナメントに続く東京一。6年生になっての都大会制覇は、来年、創立50周年を迎える用賀のチーム史上、初めてのことだ。
「10年前、20年前…。これまでも都大会に出て、頂上を目指したことはありましたが、かないませんでした。ただ、そうして先輩たちが積み上げてきた経験が、今日のこの結果につながっているんだと思います」
村上太郎監督がそう言い、うなずく。

10年前の2016年、用賀は6年生のAと5年生のB、2チームで全日本学童東京予選に出場を果たした。その翌年の2017年には全日本学童予選と都知事杯にダブル出場し、都知事杯で8強入り。村上監督の次男、迅太さんは当時のメンバーのひとりだ。現在は大学3年、慶大野球部で活躍中。2023年夏の甲子園を制した、慶応高の優勝メンバーでもある。
だからだろうか、村上監督の指導には、選手父母のひとりとして間近に見てきた慶応高・森林貴彦監督の野球を思わせる“イズム”も感じる。「参考にする、なんておこがましいですけど、確実に影響は受けていますね」。チームの一体感を大切に、選手一人ひとりの主体性を重んじ、対戦相手をリスペクトする…。常にポジティブな声掛けで選手たちを鼓舞する指揮官のバックボーンは、そんなところにもあるのだろう。
そんな村上監督と、今年のメンバーが3年生のときから二人三脚で指導にあたってきた横塚博亮ヘッドコーチは、20年前の2006年、チームが初めて世田谷大会で優勝し、都大会出場を果たしたときの主将でもある。
いわゆる“大谷世代”。中学時代には世田谷西シニアで全国優勝、U-15日本代表でもエースとして活躍し、世代No.1ともいわれた逸材だ。高校、大学では故障による挫折も経験しながら、現在はベアーズに戻り、自身の経験も踏まえた基本を後輩たちに惜しみなく伝えている。

「このチームは4年生のときにジュニアマック(都知事杯マクドナルド・ジュニアトーナメント)で優勝しましたけど、新人戦で負けて(都大会3回戦敗退)…。一度は落ち込んだところから立ち直り、ここまできたんです」
優勝に沸くナインを見守りながら、横塚コーチがつぶやく。
「一人ひとり、すごい選手がいるわけではないチームです。でも、全員が努力して、守備は以前よりも格段にうまくなった。バッティングでも、最近は遅いボール、速いボールのどちらにもしっかり対応できるようになりました。今日は最近、連敗していた船橋さんにも苦手意識を持つことなく、自分たちの力を発揮してくれた。この結果は、間違いなく彼らの成長の証ですよ」
コントリ杯もV 関東王者に

(チーム提供)
用賀はこの大会の優勝により出場権を得た、コントリビュートカップ第49回関東学童軟式野球大会(8月8、9日・神奈川県厚木市のツユキ及川球技場)でも、関東8都県の代表を相手に、1回戦10対1(対埼玉・吉川ウイングス)、準決勝13対3(対山梨・中央ジュニアベースボールクラブ)、決勝12対5(対茨城・上中妻ニューフレンズ)という圧倒的な内容で優勝。関東チャンピオンの称号も手にしている。
ライバルとしのぎを削り、敗戦も経験しながら、成長を続けてきた用賀。6年生にとっては残り少なくなった今後の大会でも、“らしい”戦いをみせてくれるにちがいない。

ライバルに敬意
4対10、6点を追いかける最終5回表──。
二死ながら満塁とし、船橋の一番・森下貴斗に打順が回った。
「何点リードがあっても追いつかれる」と用賀・村上監督が評した、不死鳥打線のリードオフマン。長打も足もある怪物登場に、一塁側応援席が沸く。
6点の差があっても、船橋側の応援席に諦めの色は全くなく、用賀側の応援席にも、優勝を確信した安心感はない。
森下が本塁打を放っても、まだ2点のビハインドではあるものの、その後に続く大野凌駕以下の強力打線を考えれば、勢いにさえ乗れば、あるいは…。
6点差で、これほど緊迫した場面を見ることがあるだろうか。それほど、今年の船橋打線の力強さ──相手から見れば恐ろしさ──は際立っている。さらに、背景を考えるなら、世田谷予選では1点差ではあったが、最終回の逆転劇で船橋が優勝している。
果たして──。
結果は三ゴロ。強い打球ではあったが、連続本塁打でMVPを獲得した用賀の三塁手・大和結星主将がこれを処理し、ゲームセットとなった。

1回表、森下の内野安打㊤と大野のセーフティバント㊥とボークで先制、石黒主将の適時打㊦で2点目を奪った


負けるときはあっさり。これもまた、今年の船橋らしいところ、とはいえるかもしれない。
「やられました!」
岡本隼人監督が嘆息する。そこまでの悔しさは見て取れない。あえて推し量るなら、船橋の野球は全うした、ということだろうか。
初回も満塁で攻撃を終えており、5イニングの攻撃で残塁は「9」を数えた。勝負に「たら」「れば」はないとはいえ、戦い方によっては…。
「いや、用賀さんが強かったですよ」
岡本監督が続けた。
「4回の攻撃なんて、もう。ノーアウト一、二塁で一番の森下の二塁打で1点。二、三塁になって、さすがに二番の大野は申告敬遠かなと思いましたが、勝負でしたからね」
結果はセーフティスクイズ失敗に終わり、後続も倒れ、この回は1点止まり。ここでも残塁を重ねる結果となった。
力勝負に、力勝負で応えた一戦。すがすがしいまでの真っ向勝負を挑んできたライバルを、たたえる以外にはなかった。
「お互いに、相手選手一人ひとりの個性まで、知りすぎるほど知っていますからね」
そう言った指揮官は、再び前を向いて、続けた。
「ここでの敗戦は、いいタイミングだったのかもしれません。しっかりと切り替えて準備し、全国大会に備えます」
この戦いの後、船橋は全日本学童マクドナルド・トーナメントで全国の強豪と渡り合い、銅メダルを獲得。用賀はコントリビュート杯関東学童で金メダルを勝ち取った。「全国3位」と「関東王者」という、新たな肩書を手にしたライバル同士の戦いには、まだまだ見逃せない「続編」があるに違いない。

4回表、中前打の髙橋冴優に続いて若月が内野安打㊤。その後、森下の適時打で高橋冴がホームイン㊦



■準決勝
◇7月12日 ◇八王子市滝ガ原運動場野球場
▽第1試合
不動パイレーツ(目黒)
070011=9
600112x=10
船橋フェニックス(世田谷)
※タイブレーク6回
【不】近藤、上田、近藤、太田、森内─瀧
【船】小池、大野、森下─石黒
三塁打/石黒(船)
二塁打/大野2、石黒、若月(船)、森内(不)
【評】1回裏、船橋フェニックスは先頭打者の森下貴斗の中前打に続き大野凌駕が右中間二塁打、倉持怜央の死球を挟み石黒信匡主将が右中間三塁打、なおも岡本悠人、佐々木翔瑛も安打で続くなど、打者11人6得点の猛攻を見せた。ところが2回表、不動パイレーツも打線が爆発。先頭の五番・太田樹希が四球で出塁すると、森内球馬が二塁打。榎本健太、古谷蒼生、中村一翔、亀井晴も安打で続くなど、打者13人で7点を奪い、一気に逆転した。その後はともに無得点が続いたが、時間制限で最終回となった4回裏、船橋が石黒主将、岡本、佐々木の連打で1点を挙げ同点に。勝負はタイブレークへと持ち込まれた。5回に1点ずつを加えて迎えた6回表、不動は近藤蓮の適時内野安打で1点を奪ったが、その裏、船橋は一死一、二塁から大野が中越えの本塁打(記録は2点適時二塁打)を放ってサヨナラ勝ちを収めた。





▽不動パイレーツ・上田博雄監督「(主力でこの日、中国から帰国し合流予定だった)間壁悠翔が飛行機の欠航で不在の中、初回の大量失点でどうなることかと思いましたが、全員がよく頑張った。一時は逆転して、いい試合になったと思います。今年は東京都の上位チームが高いレベルで実力拮抗していましたね。ウチにもチャンスはあった気がしますが、勝たせてあげられなかったのは選手たちに申し訳ないです。連覇のプレッシャー? 選手は多少、私はそれなりに(笑)。ただ、選手たちは本当によく戦ってくれました」
▽同・上田廉主将「初回にすごく取られて、みんなよく打って逆転できたのはよかったけど…。悔しいです」
▽同・太田樹希「(5回にサヨナラのピンチでリリーフし好投)球は走ってなかったけど、気持ちで抑えました。いい試合だったけど、勝ちたかったです」





▽第2試合
高輪クラブ(港)
100102=4
31003x=7
用賀ベアーズ(世田谷)
※5回時間切れ
【高】野村優彌、野村雄大─鈴木
【用】横沢、佐藤、岡田─大和
本塁打/竹村(高)、大和(用)
三塁打/竹村(高)、常永、鵜入(用)
【評】高輪クラブが1回表、先頭打者・鈴木碧馬の安打から好機をつくり、十時資の適時打で先制。しかし、その裏、用賀ベアーズは大和結星主将の先頭打者本塁打で早々に追いつくと、岡田大和、渡辺優太郎、古屋快の安打などで2点を加えた。用賀は2回にも一死三塁からの野選で1点を追加。高輪は4回に竹村匠馬の右中間三塁打と野村優彌の左犠飛で1点を上げると、最終6回にも十時の左前打と竹村の中堅への本塁打で2点を加えたが、反撃もそこまでだった。




▽高輪クラブ・海老原城一監督「このくらいは点を取られると思っていたので、試合前、選手たちには『8対7で勝とう』と話していたんです。最後に相手を焦らせることはできたのかな。この大会では、選手個々人の成長も感じられましたし、よくここまで戦ってくれたと思います。完全燃焼です。これで学童王座大会には出られるので、もう一度チャレンジです」
▽同・岩本廉太郎主将「この大会ではみんな頑張ったし、チームも成長できたと思います。用賀には5対6で負けたナガセケンコー杯に続いて連敗しましたが、学童王座でもう一度、対戦して、今度こそ勝ちたいです」
▽同・竹村匠馬「最後は5点差をつけられていたので、とにかくつなぐ意識で打ちました。チームが負けてしまい悔しいです」




